木綿を手紡ぎしてその糸を織ったり、細いリネン糸でシースルーの美しい布を織ったりしています。
わたしは和風の糸車やインド風のチャルカではなく、洋風の足踏みペダルのついた糸車で綿糸を紡いでいます。
この方法が正しいというつもりはさらさらありません。あくまで今わたしがやっている方法だ、ということです。どなたかの参考になれば、と思い、アップしました。
わたしの愛機、アシフォード社のエリザベス2です。ペダルをダブルペダルに変えました。これを使って糸を紡ぐのですが、紡ぐ前の木綿の繊維の準備が必要です。
といっても、綿花を入手して下ごしらえをする、ましてや棉を栽培して、なんて根性はありません。
紡績の準備段階のスライバーというものを入手しています。
工業的に紡績する場合、綿の繊維と糸の向きは同じです。
しかし、手紡ぎする場合、ふんわりした風合いにするために、準備するわた(ローラグ)の繊維の向きは垂直になるようにします。(紡毛糸)
スライバーを適当に引きちぎり(といってもベリベリ繊維をちぎるわけではない、繊維はすっと抜けます)、ハンドカーダーに引っ掛けていきます。 この写真だと、右から左に動かすと、引っかかります。
わたしは左利きなので、右利きの人がする動作と多分逆になります。
カーダーにたっぷり綿の繊維をくっつけます。付けすぎかもしれない。でもちゃんと繊維が揃ったスライバーをカードするのだから、大丈夫でしょう。 スラブがかった糸も面白いし…。
綿の繊維がついたカーダーを、右手でこのように逆手で(?)しっかり持ちます。左手には、何もついていないカーダーを順手で持ちます。
独りで写真を撮ったので、両手にカーダーを持った写真が撮れませんでした。検索をかければもっと分かりやすい動画があります。
上の写真の右手に持ったカーダーに、左手のカーダーを上から下に何度かこすって、綿の繊維を左のカーダーに全部移します。
そのカーダーの動かし具合、というか、コツというか、残念ながらわたしは言葉でうまく説明できません。 やってみれば、すぐに分かると思うのですが。
左のカーダーに全部移った綿の繊維を、また右のカーダーに全部移します。
このまま巻くとやたらと細長くなってしまうので、わたしは二つに分けます。
二つに分けたものを重ね、くるくると巻きます。
これで、ローラグの出来上がり。
ウールでどんどん紡ぐ人だと、ハンドカーダーでは手間がかかりすぎるので、ドラムカーダーを使う人が多いです。わたしも欲しい。
スライバーと繊維の向きが異なっているのが分かりますか?
ローラグが出来ても、すぐに紡げるわけではありません。糸車の調整が必要です。
細い木綿の糸を紡ぐ場合、フライヤーが速く回転しなくてはならないので、なおさら調整が重要になります。
可動部分にはみなグリーススプレーでグリースをを挿しますが、 特に、毎日使う前には必ず、フライヤーの軸の向こう側と、
フライヤーの軸のこちら側に、グリースを挿します。
ちなみに、ちょうど軸の下にピンボケで写っている青い缶が、わたしの使っているグリーススプレーです。
糸車は木製で、各所が手で回せるねじで止まっているだけなので、使っているうちに緩んできたり、気温や湿度でも動いてしまいます。
動きやすい箇所である フライヤーの軸を受ける手前の棒の角度、フライヤー全体を左右に調節するねじ等、 も調整します。
また、ドライブベルトが伸びてきて、糸の吸い込みが悪くなったら、フライヤー全体を少し左に動かすように、左の木のつまみを回して、ドライブベルトの張りが強くなるよう調整します。
ほかにも動かせる場所があります。どう動かすとどうなるのか、いろいろ試行錯誤してみるといいです。
この写真ではボビンは入っていませんが、ボビンを入れて、ちゃんと紐(ドライブベルト)をかけて、でも糸は引き出さないで、ペダルを踏んで回してみて、ブンブンとボビンが回るようになっていれば、糸を紡ぎ始めます。
調整の悪いまま仕事を始めると、回転が遅かったり吸い込みが 弱かったり強すぎたりして、とても紡ぎにくいのです。
時間ばかりかかるし、いらいらするし、ちょっと面倒だと思っても、 仕事前の調整はぜったいに必要です。
糸の紡ぎ方は、ウールと同じです。
利き手でない手で道糸が引き込まれないように押さえ、利き手で道糸にローラグをくっつけてブンブン撚りをかけると、繊維が絡まってくっつきます。そうしたらローラグを後ろに引っ張っていくと糸が引き出されます。
引き具合やペダルの踏み具合で糸の太さや撚りのかけ方を調節します。もうこれは、習うより慣れろ、です。 自分の観察力と考察力をフルに使うしかありません。
これも検索すれば分かりやすい動画が見つかります。
繊維が短めのアジア綿を紡ぎました。綿番手でだいたい17番手くらいになりました。
ボビンに巻けた糸は、最低数日はそのままにしてなじませます。
その後、綛(かせ)に上げ(巻き替えて)、煮て撚り止めをかけます。必要に応じて、干す前に糊付けすることもあります。使うときには、綛から木枠に巻き替えます。
このように何度も糸を巻き替えることを、糸繰りといいます。ただ糸を巻き替えるだけなのですが、これが侮れない。絡ませてしまうと作業時間が10倍くらいになってしまうこともあるし、とにかくイライラするし、後々テンションが狂ったりすることもあります。
単調なのに重要な仕事です。実は、ちょっと苦手です。
繊維の長いアメリカ綿に、繊維の短い緑綿をカードをかける段階でムラになるように(?)ブレンドしました。綿番手でだいたい16番手くらいになりました。柔らかくて、とてもいい手触りです。
さあ、この糸で何を織りましょうか!